7月の終わりに広島に行ったとき。
広電のホームに
撮影用のカメラを構えた
取材クルーがいました。

そしてインタビューを受けている
親子連れの横に
あの『あげ太くん』がいました。
何を話しているかまでは
聞き取れませんでしたが
カメラの前で親子が笑っているのは
遠目にも分かりました。

唐あげの横で
親子が笑っている。
そしてその光景が
なぜか頭に残りました。
あげ太くんを知ったきっかけは
ブログ仲間の記事でした。
広島で経営戦略サポーターを
している高塚郁子さんが
何度か取り上げています。
広島テレビの
ショートギャグアニメの
主人公です。
グッズが売れても
あげ太くんはこんなつぶやきをします。

「わしには、一銭も入らんのは
なんでじゃ~」
これをリアルの人間が言ったら
どうなるでしょうか。
冗談で言っても生々しい話になりがち。
社内で誰かがこれを言えば

といわれかねませんよね。
唐あげが言うから
みんな笑って受け取れる。
でも内容は
何ひとつ間違っていません。
同じ言葉でも誰が言うかで
受け取られ方がまったく違います。
私の前職での経験を思い出します。

そう言う人の話を
私はよく聞いていました。
言っている本人は社長を
嫌っているわけではありません。
ただ面と向かっては言えないだけです。
私はその話を聞いて
社長にそれとなく伝えました。
すると必ずこう返ってきます。

「それ言うたんは誰や」
話の内容うんぬんよりも
まず言った人の特定にかかります。
ここで名前を出したら
どうなるか。

あいつが言うなら放っておけ。
もしくは

なんでそんなことを言うんや。
どちらにしても
話の中身より誰が言ったかに
集中します。
そして言った本人の名前が
分かった瞬間に話がすんなり通らなくなる。
これを何度も見ました。
だから私はいつも
誰が言ったかは伝えませんでした。

という言い方にしました。
誰が言ったかよりも
伝聞のかたちにすると
話の内容にすっと関心が移るんです。
なぜ本人が直接言えないのか。
私の経験上、その理由は
たいていこの3つに分かれます。
ひとつは立場の違いです。
経営者と社員。
リーダーと部下。
上下関係があると言葉は止まりがち。
ふたつめは場所の違いです。
勤務地が違う。
シフトが合わない。
そもそも顔を合わせないので
話ができません。
みっつめは気持ちのズレです。
「言っても仕方がない。
でも言いたい。」
この行き場のない気持ちが
愚痴になります。
毒になります。
毒舌は必ずしも
悪意から生まれるわけではありません。
えてして、行き先を失った意見が
形を変えたものです。
私がよく遭遇したのはこんな場面。
・会議で誰も反対しない。
・決まったことが動かない。
・悪い報告だけが遅れて届く。
・現場から改善提案が出てこない。
それぞれ別々の状況のように見えますが
詰まっているのは同じところです。
「誰が」という名前と意見が
くっついたままだからです。
聞く側は内容を判断する前に
誰が言ったかを確認します。
人間はそういうものなんです。
何を言うかより誰が言うか。
よくそう言われます。
影響力の話としては
そのとおりです。
でも会議では逆に働きます。
誰が言うかで結論が決まるなら
何を言っても通らない人が出てきます。
その人は次から黙ります。
現場はよく見ています。
そして黙ったまま賛成した人は
その決定を自分のものだと
思っていません。
だから動かないんですよね。
私はそこで、会議術として学んだやり方を
自分の会議で試してみました。
まず全員が
意見を付箋に書きます。
↓
書き終えたら
壁に貼り出します。
↓
貼り終わってから
その壁を見て話します。
これだけです。
やってみてすぐに変わったこと。
会議室の温度が上がりました。

みんなが前を向いて
自分から発言している。
そういう空気に変わりました。
壁に貼ってあるのは
意見だけです。
誰が書いたかは
そこに書かれていません。
会議の参加者は
内容だけで話を進める。
それだけで
出てくる意見の量が変わりました。
面白いのはここからです。
会議が進むと
こういう声が出てきました。

「これ誰の意見?」
最初に「誰や?」と特定にかかるのと
同じ言葉ですが、意味がまるで違いました。
否定するためではなく
その意見の背景を知りたいから
誰が言ったかを聞いている。
なぜそう思ったのか。
現場で何を見たのか。
そこを聞かせてほしい
という「これ誰?」でした。
先に発言者を知ると
内容が曇ります。
先に内容だけで判断すると
名前は単なる情報になります。
同じ質問が、場が安全になった後では
まったく違った意味で捉えられたのです。
やっていることは単純なんですよね。
内容と人物をいったん切り離す。
そして安全になってからつなぐ。
道具は付箋だけ。
同じことはいろんな場面で使えます。
チャットに一行書く。
日報に一行足す。
会議の前に意見を集めておく。
誰が言ったかをいったん切り離し
内容だけで話を進める。
名前を確認する順序を変える、
それだけで結論が変わります。
これは対話を減らす話では
ありません。
面と向かって話す場面を
本当に必要なところだけに
残すための設計です。
発言と人間を切り離すのは
誰かをやり込めるためでは
ありません。
止まった流れを
もう一度動かすためです。
御社の社内で決まったことが
動かないとします。
人が悪いのではありません。
やる気の問題でもありません。
意見に人の名前がついたまま
動いているだけかもしれません。
そこを切り離すと
きっと温度が変わりますよ。
まず現状を整理したい方、お気軽にどうぞ。
| 現場と経営をつなぐDX部長 村上 郁 (むらかみ かおる) |
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