今年もノーベル賞のニュースが
流れてきました。
2026年の化学賞は
アンリ・カガンさんと
硤合憲三さんです。

< 日経ビジネス より引用>
分子には右手と左手のような形の違いがあり
その片方が増えていく
仕組みに関する研究だそうです。
説明を読んでも
正直すぐには理解できません。
すごい研究なのだろうなとは思います。
でも私たちの生活や仕事には
どんなふうに役立っているのでしょう。
そんな疑問から
ノーベル賞について調べてみました。
すると少し前の受賞研究に
目が止まりました。
2009年に経済学賞を受賞した
エリノア・オストロムという人です。

研究していたのはみんなで使う森や水を
使う人たち自身がどう守っているかです。
これは会社の仕組みを考えるうえでも
気になる話でした。
村のみんなが使う牧草地があるとします。
牛を飼っている人は
自分の牛を増やせば収入が増えます。
でも全員が牛を増やすと
草が食べ尽くされてしまいます。
一人ひとりが自分の得を考えて動いた結果
みんなが困ります。
こうした問題に対して
共有資源は政府が管理するか個人の所有物に
分けるべきだという考え方が有力でした。
ところが現実には違う場所もありました。
森や水を使う人たちが
自分たちで決まりを作り
長い間、資源を守っていたのです。
オストロムはそうした現場を調べました。
受賞理由でも共有資源の管理についての
通念に挑戦した点が評価されています。
公式受賞発表
ここで私が面白いと思ったのは
オストロムが新しい管理方法を
発明したわけではないということです。
現場にはすでに機能している
仕組みがありました。
それを、管理する側の有力な理論が
十分に説明できていませんでした。

彼女は各地の成功例と失敗例を比べ
どんな条件なら共同管理が続きやすいのかを
整理しました。
受賞委員会の学術解説
「あの村だからできた」
「昔から仲がよかったからだろう」
そうした個別の話から
ほかの現場でも仕組みを考えるための
共通点を取り出しました。
同じルールをコピーすれば成功する
という話ではありません。
何を見ればよいか。
どこを確かめればよいか。
その手がかりを
現場の営みから見つけた研究なのです。
会社で仕組みを作るときにも
よくある二択があります。
上司がルールを作り
部下に守らせます。
あるいは
「現場に任せる」と言って
その後は現場に委ねます。
前者では使う人の事情が
抜け落ちることがあります。
後者では何を決めてよいのかわからず
困りごとを現場が抱え込むことがあります。
その間にもう一つの選択肢が
あるのではないでしょうか。
ルールの影響を受ける人が
作ることにも
変えることにも参加します。
そして上司もその仕組みの中に入ります。
目的や制約を伝え
決定の経緯を理解します。
必要な資源を用意し
部署をまたぐ問題を調整します。
変更が必要なら理由を示し
合意した手続きに沿って話し合います。
これはオストロムの研究を
会社に引き寄せた私なりの読み方です。
「任せる」の中身を
もう少し具体的に考える必要が
あると思うのです。
オストロムが整理した原則を
平たく言うと次のようになります。
本人の受賞講演
① 誰が、何を使うのかをはっきりさせる
利用する人と
管理する対象の範囲が明確であること。
② 現場に合う決まりにし、負担と利益を釣り合わせる
その場所の事情に合っていて
使うことで得られる利益と
維持するための負担が釣り合っていること。
③ 当事者が、決まりを作り直せる
ルールの影響を受ける人の多くが
ルールを作り
変更することに参加できること。
④ 実際の使われ方を確かめる
利用者自身か利用者に説明責任を持つ人が
利用状況と資源の状態を確認すること。
⑤ 違反には、段階的に対応する
初めから重い罰を与えるのではなく
違反の程度や繰り返しに応じて
対応すること。
⑥ もめごとを、早く、少ない負担で解決できる
困ったときに持ち込める
身近な話し合いの場があること。
⑦ 自分たちで決める権利が認められている
当事者が作った仕組みを
外部の権力が一方的に壊さないこと。
⑧ 大きな問題は、いくつかの単位で分担して扱う
小さな単位で管理することと
単位をまたいで調整することを
組み合わせること。
読んでみると
「任せれば何とかなる」
という話ではないことがわかります。
決める。確かめる。
もめたら調整する。必要なら直す。
自分たちで運営するための仕組みが
ちゃんとあるのです。
この8つを参考に
会社向けの問いを作ってみました。
研究で検証された
診断テストではありません。
上司と現場が自社の仕組みを
振り返るためのチェックです。
それぞれ「できている」「一部できている」
「できていない」「わからない」で
考えてみてください。
| チェックすること | 自社はどうか |
|---|---|
| ① そのルールが関係する人と、対象範囲は明確か | |
| ② 現場の実情に合い、一部の人に負担が偏っていないか | |
| ③ 守る側が、ルールを変更する話し合いに参加できるか | |
| ④ 決めた後、実際の運用状況を当事者と確認しているか | |
| ⑤ 初めての違反と、繰り返す違反を区別して対応しているか | |
| ⑥ 困りごとを、気軽に相談・調整できる場があるか | |
| ⑦ 上司も、合意した決定や変更の手続きを尊重しているか | |
| ⑧ 現場で決めることと、部署間で調整することが分かれているか |

できている項目が多ければ
成功するというものではありません。
むしろ上司と現場で別々に答えてみると
面白いかもしれません。
上司は
「変更の相談はいつでも受けている」と
思っています。
現場は
「相談しても変わらない」と
思っています。
その違いが見つかれば
次に何を確かめるかが見えてきます。
「決めたのに、社員がルールを守らない」
そう感じることはあると思います。
でもそのルールが
現場に合わなくなったとき
守る側はどうすればよいのでしょうか。
変えるための話し合いに参加できるのか。
困りごとを伝えたら確かめてもらえるのか。
それとも
守るか黙って外れるかしかないのか。
ノーベル賞のニュースから調べ始めて
たどり着いたのは
自分の会社のルールを見直す問いでした。
あなたの会社では
ルールを守る人が
そのルールを直すことにも参加できますか?
「守らない」のか「直せない」のか。
自社のルールで見分けがつかない方は
一度お話ししましょう。
| 現場と経営をつなぐDX部長 村上 郁 (むらかみ かおる) |
|
| 支援内容 |
DX推進・IT活用の相談・伴走支援 組織づくり・人材育成の仕組み化 |
|---|---|
| 活動拠点 | 奈良県 |
| 営業時間 | 平日9時~18時 |
| 定休日 | 土日祝 |