「この作業、自動化できませんか」
DXの話をしていると
必ずこの相談が出てきます。
人が運んでいる。
人が入力している。
人が仕分けしている。
そこを機械やシステムに
任せられれば楽になる。
そのとおりです。
私も止める理由はありません。
ただ、聞いたあとに
必ず確認することがあります。
その仕事が速くなったあと
次の仕事はどうなりますか。
東電物流の自動化事例を読みました。
東京電力グループの物流会社です。
電柱、電線、変圧器。
電力設備を支える資機材を
倉庫で扱っています。
20kgを超える段ボールも
珍しくない現場です。
プロジェクトの当初
検討していたのは
搬送作業の省力化でした。
人が運んでいる荷物を
無人搬送車に任せる。
分かりやすい改善です。
人が運ばなくてよくなる。
搬送も速くなる。
これで十分に見えます。
ところが
事前の検証を進める中で
別のことが分かりました。
搬送だけを効率化すると
後工程である仕分け作業に
負荷が集中する。
前を速くしても
次が追いつかない。
そこで自動化の検討を
搬送だけでなく
仕分けまで広げました。
私はこの判断が
すごく大事だと考えています。
まだ何も入れていない段階で
先の工程で何が起きるかを
見にいっている。
しかもそれを
やってみてから気づいたのではなく
入れる前の検証で見つけています。
なぜここが大事なのか。
工場で考えると早いです。
加工設備を新しくして
1時間100個だったものが
150個になった。
生産性1.5倍。
でも次の検査が
1時間100個のままだったら
どうなるでしょう。
加工は速くなった。
検査の前に製品が並ぶ。
仕掛品が増える。
置き場所がいる。
「早く検査してくれ」と声が飛ぶ。
会社としては
ほとんど何も速くなっていません。
むしろ管理するものが増えて
ややこしくなっています。
これはITでも同じです。
見積作成にAIを使って
30分が10分になった。
では、その見積は
次にどこへ行きますか。
上司の承認です。
そこで半日止まるなら
20分の短縮は
会社の数字にほとんど出てきません。
それどころか
見積がどんどん作れるようになって
承認する人の机の上に積み上がる。
速くすると
詰まる場所が動きます。
ボトルネックは消えたのではなく
移っただけです。
これは失敗ではありません。
会社全体で見れば
当たり前に起きることです。
問題は技術ではなく
見ている範囲が狭いことです。
だから自動化を考えるときは
ツールを探す前に
業務フローを書き出しましょう。
紙の上のほうに
大まかな業務名を並べます。
その下に
より詳細な工程を書き足していきます。
ここはできれば
一人でやらないでください。
複数人で
わいわい言いながら書く。
細かい工程は
やっている本人しか知りません。
ある程度できあがったら
次はこれを探します。
どこでいつもたまっているか。
見つかったら
そこをボトルネックと仮定します。
そしてもう一度
みんなで考えてください。
どうすればたまらずに
製品がスムーズに流れるか。
社長が「ここが遅い」と感じている工程と
会社を止めている工程は
別のことがよくあります。
東電物流はこの後
稼働してからも
パレットを積むラックの状況を
リアルタイムで見えるようにする機能を
メーカー側に求めています。
理由は
作業が滞らないようにするためです。
入れる前も、入れた後も
見ているのは同じところでした。
派手な技術を入れなくても
受け渡しがスムーズになって
待ち時間が減れば
それは立派なDXです。
新しい設備やシステムを検討するとき
一度だけ、こう聞いてください。
「これを速くしたら、次はどうなる?」
この一言で
投資の失敗はかなり減らせます。
どこを速くするかの前に、どこで止まっているか。
書き出してみて手が止まった方は、一度お話ししましょう。
| 現場と経営をつなぐDX部長 村上 郁 (むらかみ かおる) |
|
| 支援内容 |
DX推進・IT活用の相談・伴走支援 組織づくり・人材育成の仕組み化 |
|---|---|
| 活動拠点 | 奈良県 |
| 営業時間 | 平日9時~18時 |
| 定休日 | 土日祝 |