日曜の夜です。
食事が終わって、私はリビングでVIVANTを見ています。
家族も同じ部屋にいますが、みんな自分のスマホを見ています。
テレビを真剣に見ているのは私だけです。
第2シーズンで、野崎がある行動を取ります。
乃木たちから見れば、裏切りにしか見えない行動です。
でも実際には、野崎は裏切っていませんでした。
見えている行動と、本人が守ろうとしていたものが違っていた。
ドラマなので設定は極端です。
でも見ながら、
「会社でも似たことがあるな」
と思っていました。
会社では、こんなことがあります。
上司の指示と違うやり方をした。
決められた手順を飛ばした。
報告する前に、自分で判断してお客様へ回答した。
こんな場面を見ると、
「勝手なことをするな」
「なぜ先に報告しないんだ」
と言いたくなります。
これは間違いではありません。
会社にはルールがあります。
品質も安全も守らなければならない。
取引先からの信用もあります。
社長や管理職には、それを守る責任があります。
だから、社員が勝手に判断することを警戒するのは当然です。
私は今、部下を持っていません。
DX事業部は社内でも独立した動き方をしていて、誰かの上にいるわけではありません。
ただ、部下を持っていた時期があります。
その前は、自分が部下でした。
だから両方の言い分がわかります。
上に立つ側が勝手な判断を怖がる理由も、
下にいる側が動けなくなる理由も、
どちらも身に覚えがあります。
ただ、私は一つだけ確認します。
その人は、
「何を守ろうとして、その行動を取ったのか」
です。
たとえば、手順を飛ばした人が二人いたとします。
一人は、
「面倒だったから」
飛ばした。
もう一人は、
「このままだと納期に間に合わない。ここを省いても品質には影響しない」
と考えて飛ばした。
行動だけを見れば、どちらも手順違反です。
でも中身は違います。
前者は、自分の都合で動いています。
後者は、仕事の目的を見て判断しています。
もちろん、後者なら正しいという話ではありません。
「品質には影響しない」という判断が間違っていることもあります。
だからこそ、教える内容が変わります。
「勝手なことをするな」
で終わらせるのではなく、
どこまでは自分で決めていいのか。
どこから先は確認が必要なのか。
そこを伝える必要があります。
指示通りに動く人は、管理する側から見ると安心です。
余計なことをしない。
必ず確認してくる。
でも、何でも確認が必要な会社では、そのたびに仕事が止まります。
「課長に聞かないとわかりません」
「社長の判断待ちです」
そんな状態になります。
すると今度は、
「もっと自分で考えて動いてほしい」
と言いたくなる。
社員からすると困ります。
自分で判断すると怒られる。
確認すると、
「それくらい自分で考えて」
と言われる。
これでは動けません。
経営者や管理職が悪い、という話ではありません。
私自身、両方言ったことがあります。
問題は、言っていることの矛盾ではありません。
自分で決めていい範囲を決めないまま、自分で考えて動けと求めていることです。
「納期を守れ」
だけでは、現場は判断できません。
納期のためなら品質を落としていいのか。
安全を後回しにしていいのか。
もちろん違います。
だから、判断基準はもう少し具体的にします。
「安全と品質は絶対に守る。その範囲なら、納期を守るために現場で判断していい」
ここまで言えば、判断しやすくなります。
ただ、口で言っただけでは足りません。
判断が必要になるのは、上司が近くにいないときです。
夕方の現場かもしれない。
電話がつながらないときかもしれない。
そのときに思い出せなければ、その基準は使えません。
だから、判断基準は誰でも見られる場所に置いておく。
紙でもいい。
共有ノートでもいい。
毎日使うシステムの中でもいい。
必要なときに確認できて、初めて判断材料になります。
ただ、置き場所を決めただけでは、まだ半分です。
無印良品にMUJIGRAMという店舗マニュアルがあります。
改訂したい点は店舗の側が入力し、今より良いと判断されれば反映される。
毎月20ページほど、年間で全体の1割以上が書き換わっていきます。
これをつくった松井忠三さんは、マニュアルが使われないのは更新しないからだ、と言っています。
置いたものが古くなれば、現場は見なくなります。
上から配っただけの基準も同じです。
使いにくいと感じた時点で、誰も開かなくなる。
だから、現場が直せる場所に置きます。
私が会社でやってきたことも、突き詰めると同じです。
その場にいない人にも、同じ言葉が同じ意味で届くようにする。
自分で判断して動いた。
結果として、お客様に喜ばれた。
だから、
「今回はうまくいったからいいか」
で終わらせる。
これも危ないです。
たまたま問題にならなかっただけかもしれません。
逆に、目的も判断も間違っていなかったのに、結果だけ失敗することもあります。
だから私は、結果だけでは見ません。
行動だけでも見ません。
何を守ろうとしたのか。
何を見て判断したのか。
なぜ、その行動を選んだのか。
そこを見ます。
これは叱るときだけの話ではありません。
ほめるときも同じです。
「よくやった」
だけでは、本人には何が良かったのか伝わりません。
たまたま結果が出ただけかもしれない。
だから聞きます。
何を守ろうとしたのか。
何を見て、そう判断したのか。
そこを聞いたうえで、
「そこを見て決めたのは良かった」
と言えば、次も同じ見方で判断してくれます。
叱る材料を探すために聞くのではありません。
ほめる材料を見つけるためにも、同じことを聞きます。
そして場合によっては、見直すべきなのは本人ではなく会社の側です。
任せる範囲を決めていなかった。
判断基準を渡していなかった。
そういうこともあります。
会社には、ときどき扱いにくく見える人がいます。
意見を言う。
指示通りに動かない。
「そのやり方、おかしくないですか」
と言う。
正直、面倒に感じることもあります。
もちろん、本当にルールを守らないだけの人もいます。
周りに負担を押しつける人もいます。
そこまで「個性だから」と認める必要はありません。
ダメなものはダメです。
ただ、
こちらが「問題行動」と見ているものの中に、
会社を良くするヒントが混じっていないか。
そこは一度、確認する価値があります。
VIVANTなら、敵か味方か。
会社なら、問題社員なのか。
それとも、自分で考えて動こうとしている社員なのか。
見えている行動だけでは、わかりません。
今夜もリビングでは、家族はスマホ、私はテレビです。
そのまま続きを見ます。
でも会社では、見えている行動だけで決めない。
社員が思い通りに動かなかったとき、私はまず聞きます。
「何を守ろうとして、そう判断したの?」
その答えの中に、
その人を育てるヒントと、
会社の仕組みを見直すヒントが、
両方あります。
私が一緒に仕事をしたいのは、そうやって人の判断を見ようとしている会社です。
判断できる社員が育つ会社は、放っておいてできるものではありません。
誰かが意識して、そういう会社にしています。
「うちは違う」と思われた方こそ、一度お会いしたいです。
| 現場と経営をつなぐDX部長 村上 郁 (むらかみ かおる) |
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| 支援内容 |
DX推進・IT活用の相談・伴走支援 組織づくり・人材育成の仕組み化 |
|---|---|
| 活動拠点 | 奈良県 |
| 営業時間 | 平日9時~18時 |
| 定休日 | 土日祝 |