現場と経営の断絶を解く。
中小製造業のDX部長が書き続けるブログ

アドラーも指示ゼロ経営も、ほめ育と矛盾しない――その理由を考えてみた

ほめ育

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ほめ育は「褒めそやす」とは違う――ベクトル合わせという人間観

今日、指示ゼロ経営の米澤晋也さんのブログ記事を読みました。

 

「褒めて伸ばす」で人材育成に失敗するケース

 

米澤さんは「褒めて伸ばす」に消極的だといいます。理由はアンダーマイニング効果、つまり外部から褒めることで人の内発的な動機が壊れていくという心理学の知見にあります。褒め続けると部下の判断基準が「これは褒められるか?」になり、自律性を失う。アドラー心理学でも「褒めることは相手を評価・支配することだ」という指摘があります。

読みながら、「そうだよな」と思う自分がいました。

同時に、「でも私がやっているほめ育は、それとは少し違う気がする」とも思いました。

褒めることへの違和感と、ほめ育との出会い

ほめ育は、株式会社ほめ育財団が提唱する人材育成の考え方で、「褒めることで人を伸ばす」というシンプルな言葉で紹介されることが多いです。

ただ、私の理解は少し違います。

ほめ育における「褒める」は、ベクトルの確認だと思っています。

 

 

「あなたの行動は、会社の向かう方向と同じだよ」と伝えること。それが褒めの実質です。評価して気分よくさせるためではなく、「その方向で大丈夫」という情報を届けること。安心して動けるようにするための、ナビゲーションに近いイメージです。

逆にベクトルがずれているときは、「会社はこう考えている。あなたはこう考えている」という事実を整理して伝えます。「あなたが間違っている」ではなく、「方向が違う」という話です。

「認める」と「同意する」は別の話

米澤さんやアドラーが批判しているのは、「褒めることで人を操作しようとする」という構造だと私は解釈しています。承認を餌にして動かす、という意図が問題の本質です。

ほめ育のベクトル合わせは、そこが違います。操作ではなく、関係の透明化に近い。

「あなたはそう考えるんだね」と認めることと、「あなたの考えに同意する」は別のことです。ベクトルが違う相手を認めることはできます。でもそれは相手の方向性を肯定することではありません。

肯定・否定はどちらも片方の視点でしかない。「そういう人もいる、そういう考え方もある」と理解しようとする姿勢が、対話の前提になると思っています。

しめ育と、別の船

ほめ育を実践していると、「そもそもベースが違いすぎる」という場面に出会うことがあります。ベクトルを合わせる以前に、行動や姿勢の土台そのものを揃えなければならないケースです。

そういうときは、一見ほめ育とは反対のことをする必要があります。叱るべきところは叱る。冗談で済ますべきではない場面では、きちんとその理由を言葉にして伝える。そして相手の背景も確認したうえで、改善を促す。これをほめ育の文脈で「しめ育」と呼ぶこともできると思っています。

たとえば工場で危険な行動があれば、まず大声とジェスチャーで止めます。そこに「認める・認めない」の話は関係ありません。文脈によって関わり方は変わります。ほめ育は「いつでも褒める」ではなく、状況を読んで適切に関わるための人間観です。

そして、ベクトルが合わないまま一緒にいることが双方にとって無理な場合、「別の船に乗る」という選択があります。ほめ育の研修でそう教わりました。

放り出すのではなく、船を選ぶ。その違いは大きいと思っています。

離職を「失敗」や「裏切り」として見るのではなく、お互いに合う場所を探した結果として捉える。それはある意味、相手の人生を会社の都合より上に置くということではないでしょうか。

結局、技法の話ではない

ほめ育もTOCも、指示ゼロ経営も、私の中では一つの人間観でつながっています。

人は違って当然。だから関係は合意で成り立つ。褒める・叱る・離れる、という個別の技法の話ではなく、相手を一人の人間として扱うという姿勢が先にある

米澤さんの記事を読んで、改めてそう思いました。矛盾しているのではなく、入口が違うだけです。

どの手法も、突き詰めれば「人をどう見るか」という問いに行き着きます。その問いを持ち続けることが、中間管理職として現場に立つ自分には一番大事なことだと思っています。

 

 

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現場と経営をつなぐDX部長
村上 郁 (むらかみ かおる)
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組織づくり・人材育成の仕組み化
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現場と経営をつなぐDX部長

                               
名前村上 郁
住まい奈良県

Profile

「ITを入れたのに、現場が動かない」——
その声を、製造業の中から
聞き続けて10年以上。

C言語エンジニアから
起業・倒産・再就職を経て、
今は中小製造業のDX部長として
現場と経営の橋渡しを
実務でやっている。