現場と経営の断絶を解く。
中小製造業のDX部長が書き続けるブログ

春闘を見て「うちには関係ない」と思った経営者へ。

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3月18日、春闘の集中回答日。

大手企業が軒並み満額回答を出しました。
トヨタが6年連続満額。
電機・自動車が続きました。

 

連合の第2回集計(3月24日集計)では
全体の賃上げ率5.12%。
中小企業(300人未満)は5.03%。

 

昨年同時期をわずかに上回りましたが
連合が掲げた目標6%には届きませんでした。
(参照:連合「2026春季生活闘争 第2回回答集計結果」2026年3月27日公表
https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/roudou/shuntou/2026/yokyu_kaito/index.html#kaito_02

 

そのニュースを見ながら
あなたは何を思いましたか?
「うちには関係ない話だ」

 

そう感じた経営者は
少なくないと思います。


中小の賃上げ率は5.03% 目標の6%には届かない

東京商工リサーチの調査では
中小企業で6%以上の賃上げを
予定している企業は7.2%。
10社に1社にも満たない数字です。
(参照:東京商工リサーチ「2026年度の賃上げ」実態調査
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202517_1527.html

 

数字だけ見れば
「中小は遅れている」
という話になります。

 

でも私はその見方に
少し違和感があります。

 

問題は賃上げの意欲ではありません。
原資があるかどうかでもありません。

 

稼ぐ力を上げる方向に
頭が向いているかどうか

そこだと思っています。

 

 


「ザ・ゴール」が突きつけた問い

1984年、イスラエルの物理学者
エリヤフ・ゴールドラット博士が
一冊のビジネス小説を書きました。

 

「ザ・ゴール」。

 

製造業の工場長が主人公の物語で
日本でも翻訳・出版され
多くの経営者に読まれてきた本です。

 

TOCを学ぶ過程で「ダイスゲーム」という
シミュレーションを体験する機会がありました。

 

そこで利益感度分析を学んだとき
正直、驚きました。

 

コスト削減が利益に貢献する度合いは
思っていたより、ずっと小さい。

 

むしろ売値を上げる、
スループットを増やすという方向の方が
利益への貢献度がはるかに大きかったのです。


コスト削減と売上アップ どちらが利益に貢献するか

TOCの利益感度分析を
数字で見るとこうなります。

 

ある会社が今
損益分岐点にあると仮定します。

 

ここから同じ利益インパクトを出すために
それぞれを何%動かす必要があるか。

 

・固定費を削る → 25%削減が必要
・販売数を増やす → 20%増が必要
・変動費(仕入値)を下げる → 10%削減が必要
・価格を上げる → 6.7%上げる!

 

利益に対する価格の感度が
圧倒的に高いんです。

 

 


ここで多くの経営者が考えることは
「値上げはお客様が離れるから怖い」
ということだと思います。

 

その感覚はよくわかります。
でもこの数字が教えてくれるのは
それとは逆のことです。

 

安易な値下げ・値引きが
どれほど利益を破壊するか。

 

頑張って固定費を25%削って
ようやく出る利益と
たった6.7%の値下げで
吹き飛ぶ利益は同じ大きさです。

 

QC活動や3S活動で
コツコツ積み上げてきた改善の成果が
営業の「今回だけ」の値引きで
消えていく。

 

そういう場面を
現場で何度も見てきました。

 

これは「利益感度分析」であり
同時に「経営感度分析」でもあります。


利益を決める3つの指標

ゴールドラット博士は
企業の利益をシンプルな
3つの指標で見ることを提唱しました。

 

スループット(Throughput)
売上高から材料費だけを引いた額です。
在庫は作っても売れなければゼロ。
顧客に届いて初めてカウントされます。

 

在庫・投資(Inventory/Investment)
製品・仕掛品・設備など
まだお金になっていないものです。
多いほど「止まったお金」が増えます。

 

業務費用(Operating Expense)
人件費・光熱費・経費など
組織を動かすためのお金です。
削れますが下限があります。

 

利益を最大にするには
入ってくるお金(スループット)を増やし
余分なお金(業務費用)を減らす。

この2つしかありません。

 

そしてゴールドラット博士は
はっきり優先順位をつけました。

 

① スループットを増やす
② 在庫・投資を減らす
③ 業務費用を減らす

 

コスト削減は3番目です。

(参照:ゴール・システム・コンサルティング「スループット会計」
https://www.goal-consulting.com/solution/throughput.html


「時間当たりの利益」という視点

もう一つ、TOCが教えてくれた
大事な概念があります。
それが「時間」です。

 

同じ1万円の利益でも
1時間で稼ぐのか
24時間かけて稼ぐのかでは
まったく違う話になります。

 

製造業のプロセスで見ると
材料→加工→納品→入金という
お金が流れるルートがあります。

 

そのどこかに詰まりがあれば
川にダムができるように
お金がそこで止まってしまいます。

 

その詰まりを
「制約(ボトルネック)」と呼びます。

 

ボトルネックを解消することで
同じ業務費用のまま
スループットが増えます。

 

時間あたりの利益が
上がっていく。

 

コスト削減よりも
まずここを見ることが
TOCの基本的な発想です。


ボトルネックに集中した現場の話

TOC学会で紹介されていた
ある機械設計・制作会社の事例です。

 

その会社のボトルネックは
「機構を考える工程」でした。
設計者の発想力が必要な
最も重要な工程です。

 

そこに集中するために
非クリエイティブな作業を削減しました。

 

部品データの事前登録など
設計者が本来の仕事に
集中できる環境を整えたのです。

 

結果としてリードタイムが短縮され
全体最適が実現しました。

 

コスト削減ではなく
ボトルネックへの集中が
成果を生んだ事例です。

 

2025年11月開催、TOC学会新潟の様子

(参照:TAGAIWORKS「TOC学会新潟に参加しました。」


「防衛的賃上げ」ではなく「果実を分ける賃上げ」を

東京商工リサーチの調査では
賃上げ理由の1位は
「従業員の離職防止」で80.3%でした。

 

つまり多くの中小企業が
稼いだ果実を還元するためではなく
人が去るのを止めるために
賃上げしている現実があります。

 

これが続けば当然
「賃上げ疲れ」になります。

 

外からの圧力で
やむなく上げる賃上げと
稼ぐ力を上げた結果として
自然に上げられる賃上げ。

 

同じ「賃上げ」でも
組織への影響がまったく違います。

 

前者は「削って捻出した原資」。
後者は「増えた果実を分けた原資」。

 

社員はその違いを
意外とちゃんと感じています。


無い袖を振れるようにするために

「無い袖は振れない」
この言葉は正しい。

 

でも「無い袖」を
所与のものとして
受け入れる必要はありません。
袖を作ればいい。

 

そのためにまず問うべきことは
コストをどこで削るか、ではなく
今、自社のスループットを
止めているボトルネックは
どこか。

 

営業プロセスか。
製造の特定工程か。
情報が届いていない
どこかの部署か。

 

その「どこか」を特定して
そこに力を集中する。
これが稼ぐ力を上げる最初の一歩です。

 

世論に押されて上げるのではなく
自分たちの力で振れるようにする。

 

そのために今持っているもので
すぐにできることを
一緒に考えませんか。


TOCを現場で使っている人の話を聞く

TOCに興味を持った方に
一つお知らせがあります。

 

2026年4月18日(土)
大阪・船場でTOC学会が開催されます。

 

書籍や研修で「知っている」だけでなく
実際に現場でTOCを使っている人が
試行錯誤のリアルを持ち寄る場です。

私も参加予定です。

 

TOCが気になっている方
現場の改善が行き詰まっている方
一度のぞいてみてください。

詳細・申し込みはこちら。


TOCに関する具体的な進め方が
気になる方はお問い合わせください。

お問い合わせはこちら

 

 

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お問い合わせ

現場と経営をつなぐDX部長
村上 郁 (むらかみ かおる)
支援内容 DX推進・IT活用の相談・伴走支援
組織づくり・人材育成の仕組み化
活動拠点 奈良県
営業時間 平日9時~18時
定休日 土日祝

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現場と経営をつなぐDX部長

                               
名前村上 郁
住まい奈良県

Profile

「ITを入れたのに、現場が動かない」——
その声を、製造業の中から
聞き続けて10年以上。

C言語エンジニアから
起業・倒産・再就職を経て、
今は中小製造業のDX部長として
現場と経営の橋渡しを
実務でやっている。