意思決定が遅い会社は、なぜ遅いのか。
「経営者の決断力の問題だ」と言われることが多い。
でも、私はそう思っていない。
2026年の製造業トレンドを分析したレポートに
こんな指摘があった。
「意思決定の遅延は、もはや単なる官僚的な煩わしさではなく、
構造的なリスクである」
耳が痛い話だと思った人も多いのではないだろうか。
私もそのひとりだ。
ただ、このレポートを読んで私が気になったのは
「なぜ遅いのか」という部分ではなかった。
「そもそも、判断に必要な情報が届いているのか」
という問いだった。
現場では毎日、大量の情報が生まれている。
トラブルの予兆、顧客からの声、段取りのロス、小さなひと言。
その情報が、上に届かない。
なぜか?
「言いにくいから」というケースが、思いのほか多い。
すぐ怒る上司には聞けない。
前例を覆す提案は、場の空気が許してくれない。
そもそも「報告すること自体がリスク」と
感じている現場もある。
これは個人の性格の問題ではない。
情報を届けにくくする「構造」の問題だ。
前職でチャットツールを導入したときの話をしたい。
最初は、誰も使わなかった。
「また新しいツールか」という空気は、
導入した本人にもひしひしと伝わってくる。
そこで私がとった作戦は、「使わせる」ではなかった。
全社への共有事項や案件情報を、そのチャットにだけ流すようにした。
「そこに行かないと重要な情報が見れない」
という状態をつくったのだ。
見る習慣ができてきたところで、
今度は私自身の書き方を変えた。
メールのような前置きを一切書かない。
内容によっては、口語で砕けた表現も使う。
「これでいいんだ」を、私が率先して見せた。
すると、徐々に他のメンバーも書くようになってきた。
そしてある日、私の知らないグループチャットが
社内にたくさん立ち上がっているのに気づいた。
現場が、自分たちで情報をやりとりする場所をつくっていた。
これが、私が目指していたゴールだった。
私がIT活用を推進する理由は、効率化のためではない。
この「届かない」を解消するためだ。
チャットツールを使えば、面と向かっては言えないことが書ける。
動画マニュアルを整備すれば、聞きにくい相手に聞かなくて済む。
情報の経路が増えれば、人間関係のノイズを迂回できる。
Face to Faceのコミュニケーションは大切だ。
ただ、それは「本当に必要な場面」に絞ったほうがいい。
むしろ、対面でない方が、
事務的な報告だけのほうがスムーズに事が進むことは多い。
日常の情報流通をITに任せることで、
大事な対話に集中できる余白が生まれる。
TOCの考え方に、こういう視点がある。
「制約(ボトルネック)を見つけて、そこを集中的に改善せよ」
経営者が「決断できない」状態を放置しているとき、
その制約はどこにあるのか。
多くの場合、それは「経営者の意志の問題」ではなく、
「経営者のところに正確な情報が届いていない」という構造だ。
判断材料が揃っていなければ、決断できなくて当然だ。
責めるべきは「決断しない人」ではなく、
「情報が届かない仕組み」のほうである。
情報は、企業の血液だと思っている。
血液が滞ると、組織のどこかが壊死する。
それは「会議での報告の質」に現れるし、
「小さなトラブルが大きくなってから発覚する」
という形でも現れる。
DXという言葉は、ツールの話として語られがちだ。
でも本質は、「情報の流れをよくすること」だと私は考えている。
血流をよくすることで、はじめて経営判断の質が上がる。
あなたの会社では、現場の情報はどこまで上に届いていますか?
そして、届かない情報があるとしたら、
それは「伝える人の責任」でしょうか。
それとも「伝えにくくしている構造」の問題でしょうか。
| 中小製造業専門のIT参謀 村上 郁 (むらかみ かおる) |
|
| 支援内容 |
ランディングページの制作支援 ITシステムの構築・運用のサポート |
|---|---|
| 活動拠点 | 奈良県生駒市 |
| 営業時間 | 平日9時~18時 |
| 定休日 | 土日祝 |