現場と経営の断絶を解く。
中小製造業のDX部長が書き続けるブログ

スニーカー屋がAI企業になった日、フジテレビが稼ぎ頭を捨てた日

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先週4月15日(水)
二つの企業が同じ日に
対照的な決断を発表しました。

 

一つはフジテレビの親会社
フジ・メディア・ホールディングスです。

長年グループの収益を支えてきた
不動産事業を売却し
テレビ局としての本業に

集中する方針を発表しました。

 

もう一つはアメリカの
スニーカーブランドAllbirdsです。

シリコンバレーで爆発的に流行した
サステナブルスニーカーの会社が
靴事業を売却し

「NewBird AI」と名前を変えて
AI企業に転換すると発表しました。

 

一方は稼ぎ頭を手放して本業に戻る。
もう一方は本業を手放して流行に乗る。

 

正反対の決断に見えます。
でも読み進めると
同じ構造が見えてきます。


正反対に見えた二つの決断

フジHDは稼ぎ頭の不動産を手放し
本業のコンテンツ制作に回帰しました。

 

Allbirdsは本業の靴を手放し
「NewBird AI」として
AI企業に転換しました。

 

一見すると正反対の決断です。
でも読み進めると
同じ構造が見えてきます。


どちらも、追い詰められていた

フジも見方を変えれば
追い詰められた末の決断です。

 

清水社長は昨年12月まで
「不動産は大事なセグメントだ」
と抵抗していました。

 

村上ファンドに33.3%まで
買い増されるという圧力がなければ
この決断はなかったかもしれません。

 

社内からは今も
「制作費がますます削られる」
という声が出ています。

 

本業回帰に見えるこの決断が
果たして覚悟なのか逃げなのか——
それはまだ誰にも分かりません。

 

Allbirdsは数字が雄弁に語っています。

 

ピーク時の時価総額は6000億円。
それが発表直前には
32億円まで崩落していました。

 

靴ブランドを売った額より
会社全体の価値の方が低い。

 

残ったのは上場という「器」だけです。
その器を使ってAI資金を調達しました。

 

発表翌日に株価が30%下落した事実が
この決断の本質を示しています。


追い詰められる前に動けるか

二つの事例から見えてくる問いがあります。

 

「自社の本業を
自分で定義できているか」

 

フジもAllbirdsも
外圧か市場に追い詰められて
初めて動きました。

 

自分で定義して動いた組織ではない。

 

この問いは他人事ではありません。
私自身が身をもって
経験してきた問いです。


箱は同じでも
中身が変わると会社は別物になる

以前在籍していた会社の話をします。

 

薄板溶接を主力とする加工業の工場が
化粧品の梱包事業に参入しました。

 

浄化装置などの設備投資が必要になり
工業製品と民生品では
品質管理の基準もまったく違います。

商習慣も異なる世界でした。

 

気づけば技術者が
営業をするようになっていました。

 

工場という箱は同じです。
でも中身は別の会社になっていた。

 

その会社は倒産しました。

 

振り返ると不思議なことがあります。

 

表向きは「加工業に戻ろう」と
向かっているように見えていました。
でも今思えば

着地点はまったく別のところに
向かっていたのではないか。

 

AからA’に戻るように見せかけて
実はZに向かっていた。

 

「自分たちは何屋か」という問いへの
答えがいつの間にか失われていた。
私はそう見ています。

 

フジもAllbirdsも
問いの構造は同じです。


IT担当者の矜持

この経験があるから
IT専門家として製造業に身を置くとき
自分に問い続けてきたことがあります。

 

「自分はIT屋として来たのか。
それとも製造業の本業を
強くしに来たのか」

 

「DXが進まないのは
IT人材がいないからだ」
という声をよく聞きます。

 

でも私はそう思っていません。

 

製造業の本業を理解しながら
ITを使える人間がいないことが
本当の理由です。

 

IT専任を置いても
その人が「IT屋」として動くだけなら
化粧品梱包を始めた工場と

同じ構造です。

 

箱(ツールや部署)だけ変えて
本業の問いを後回しにしている。

 

そしてこれは
経営者の責任に転嫁して
終わる話ではありません。

 

IT担当者自身が
本業への問いを持ち続けること。
それがIT担当者の矜持だと

私は考えています。

 

経営者が定義していないなら
IT担当者の側から問いを立てればいい。
追い詰められる前に。


あなたの会社のIT担当は何屋さんですか

IT担当者が「IT部門」に
なっていないか。

 

本業の課題を解くために
動いているか。

 

そしてもう一つ。

 

その問いを自分から立てているのは
IT担当者ですか。
それとも経営者ですか。

 

どちらが先でも構いません。
でもどちらも立てていないなら
フジやAllbirdsと

同じ場所に立っています。

 

具体的な進め方が気になる方はこちらへ。
お問い合わせはこちら

 

 

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お問い合わせ

現場と経営をつなぐDX部長
村上 郁 (むらかみ かおる)
支援内容 DX推進・IT活用の相談・伴走支援
組織づくり・人材育成の仕組み化
活動拠点 奈良県
営業時間 平日9時~18時
定休日 土日祝

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現場と経営をつなぐDX部長

                               
名前村上 郁
住まい奈良県

Profile

「ITを入れたのに、現場が動かない」——
その声を、製造業の中から
聞き続けて10年以上。

C言語エンジニアから
起業・倒産・再就職を経て、
今は中小製造業のDX部長として
現場と経営の橋渡しを
実務でやっている。