
中小企業の経営者にとって、「会社を変える」ことは大きな課題です。社員の反発、業務の混乱、そして何より「本当に変えて大丈夫なのか?」という不安。しかし、現状をそのままにすることこそが、より大きな問題を生むこともあります。
今回紹介するのは、福井県の靴屋さん ザカモア の事例です。この会社は、業務のつながりを見直し、部署や役職の枠を取り払い、徹底的にボトルネックを見直すことで、組織全体に活力を生み出しました。その取り組みを学びながら、「変えるのが怖い」と感じる経営者が一歩踏み出すためのヒントを探ります。
ザカモアの特徴のひとつが、 「すべての仕事を繋げる」 という考え方です。
多くの企業では、業務が部署ごとに区切られ、ともすれば社員同士のつながりが希薄になりがちです。しかし、ザカモアではできる限り業務をシンプルにつなげることで、社員全員が会社の流れを理解しやすくしています。
これを聞いて思い出したのが、「後工程はお客様」という製造業の考え方。通常、この言葉は前後の工程をスムーズにするための指針ですが、ザカモアでは 「つなげられるものはすべてつなげる」 という発想にまで発展させています。
例えば、自社でジョブローテーションを導入することで、社員が異なる業務を経験し、 「見えなかった課題」 に気づくことができる。しかし、実際には効率や納期の問題を考えると、なかなか実行に踏み切れない企業も多いのではないでしょうか。
ザカモアの事例は、その 「できるところから始める」 というスタンスがポイントです。全部を一気につなげるのではなく、 少しずつ変えること で、業務がスムーズになり、社員の意識も変わっていくのです。
もうひとつの特徴が、「無くす」 というアプローチ。通常、企業は新しいルールや仕組みを 「増やす」 ことで問題を解決しようとします。しかし、ザカモアでは逆に 「無くす」 ことに注力しました。
部署を無くす → 業務を固定化せず、状況に応じて最適な動きができる
評価制度を無くす → 競争ではなく、全体の成長を重視
役職を無くす → 指示待ちではなく、主体的に動く文化をつくる
この発想は、TOC(制約理論) でいう「方針制約をなくす」という考え方。つまり、「決まりごとがあることで、かえって動きづらくなっていないか?」という問いかけです。
しかし、こうした取り組みには 「誰がやるの?」問題 がつきものです。役職をなくしても、全員が積極的に動かなければ現場は混乱するだけ。実際、多くの会社でこれが進まない理由になっています。
ザカモアでは、「全員経営」 を目指し、小さな改善を繰り返しながら組織のあり方を変えていきました。その結果、業務の流れがどんどん進化し、 「3日休むと、もう違う業務になっている」 というほど、常に新しいやり方が生まれています。
ザカモアの経営の背景には、社長であるトニーの「指示100の時代」からの大きな変化があります。かつては社長がすべてを指示していた会社でしたが、 「社長の出社拒否」 という事態も経て、社員主体の組織に生まれ変わったのです。
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これは、多くの中小企業経営者にとって重要な示唆を与えます。変えることをためらい 「今はまだその時じゃない」 と先送りにするのか、それとも 「今が最速の決断」 と腹をくくるのか。
特に ベテラン社員が多い会社では、変えるのが難しくなりがち です。「変えたら辞めるのではないか」「経験者がいなくなると業務が回らなくなる」といった不安がつきまといます。しかし、 ザカモアでも当時、幹部であるナンバー2の退職もありながら、今、組織はより強くなっている のです。
会社を変えることは、一気にすべてを変えることではありません。 「小さく崩しながら、ボトルネックに集中する」 ことで、企業は少しずつでも前に進めます。
業務のつながりを見直す → できる範囲でジョブローテーションや部署横断の動きを作る
不要なルールをなくす → ルールを増やすのではなく、シンプルにしていく
変えることを前提にする文化をつくる → 経営者が「決断」を先延ばしにしない
ザカモアのように、「変えることが当たり前の経営」 を目指せば、会社はより柔軟で強い組織になれるはずです。
「どうせ変わらない」と諦める前に、「今はまだその時ではない」と先延ばしせずに、まず 「小さく変える」 ことから始めてみませんか?
中小製造業専門のIT参謀 村上 郁 (むらかみ かおる) |
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支援内容 |
ランディングページの制作支援 ITシステムの構築・運用のサポート |
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活動拠点 | 奈良県生駒市 |
営業時間 | 平日9時~18時 |
定休日 | 土日祝 |